

![]() いぬい・あきと 1971年、東京都生まれ。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を主宰し、台本も担当。寸劇や踊りなど、数十の演目を音楽で繋いでいく独特のスタイルで、熱狂的なファンを獲得している。また、近年では作家としても活躍。デビュー作『まずいスープ』(新潮社)は第141回芥川賞にノミネートされ、選考会でも高い評価を集めた。現在、『季刊 真夜中』(リトルモア)で『松竹梅』を連載中 |
「もう、めちゃくちゃでしょ(笑)」作者本人がそう言って笑う『ただいま おかえりなさい』。収録された113のショートストーリーには、いずれもシュールで奇想天外な“戌井ワールド”が広がっている。本作の基になったのは、5年前に作られた二冊の文庫本だった。 「僕が主宰する『鉄割アルバトロスケット』は当時、やたらイベントに呼ばれていて。でも、夜中になると体がついていかないし、なんだかもう嫌だなぁって、僕はとにかくひよっていたんです。それを見ていたイラストレーターの多田玲子さんが『何かしようよ!』と。DVDを作るとかいろいろな計画があったんですけど、どれも実現しなかったので(笑)、これだけはちゃんと果たさなきゃと」 戌井さんがメールで文章を送り、それに多田さんが絵を付ける。そのやり取りを3、4カ月続けた。 「鉄割の台本は作っていたけど、やっぱりまったく別物だから頭の切り替えが難しかったですね。でも、発想の出どころは似ているかもしれない。今回は多田さんがキャッチしてくれるという安心感があったから、瞬発力だけでいろんな球を、それこそ固まりきってない泥団子でも投げてました(笑)。ちなみに“座布団レース”は、実際に見た夢からインスパイアされて作った話なんですよ。山の頂上で友達と大喜利大会をする夢だったんですけど、笑いながら起きたのは初めてだったから衝撃的でした(笑)」 そうしてたまった作品を友人に製本してもらい、二冊の文庫本としてイベントの会場などで販売を開始。完全に一冊ずつ手作りしていたため、どれだけ作っても売れるペースに追いつかなかったそう。だからこそ「これをちゃんと書店に並ぶ本にしていただけたのは、本当に嬉しい」と顔をほころばせる。 「出版にあたって、一度すべてバラバラにして僕が話を並べ替えたり、話の間に繋ぎのイラストを増やしたりと、全体にストーリー性を持たせる工夫をしました。読んでいて心地いい、楽しいと思ってもらえるよう、文と絵のバランスを調整しています」 昨年は小説『まずいスープ』が芥川賞候補となり、本作も川上未映子やいしいしんじが絶賛するなど、その才能は文壇(ぶんだん)にじわじわと浸透し始めている。まずは本作で、彼が生み出す無限のワンダーランドを楽しんでみて。 |
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※情報は、2010年3月のものです