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December 2009 vol.84 12
今月の好奇心 book
小川糸
profile
おがわ・いと

1973年生まれ。06年に絵本『ちょうちょ』(講談社)を発表。07年、小説デビュー作『食堂かたつむり』(ポプラ社)が話題を集める。09年の『喋々喃々』(ポプラ社)に続き、本作で3作目。『食堂かたつむり』は映画化され、10年2月6日に全国公開される。また、音楽製作チームFairlifeで作詞家・春嵐としても活躍。

協力:青山ブックセンター丸ビル店
TEL:03-5221-8860
http://www.aoyamabc.co.jp/

子供のころ、大人になっても絶対に忘れないでいようと思った(でも実際はほとんど忘れかけている)大切な想い――。小説『ファミリーツリー』には、それが詰まっている。作品に流れる暖かい空気感は変わらないが、駆け抜けるように進んでいく物語は、これまでの小川糸さんの小説とは趣が異なるようだ。

「今回は“強い作品”にしたかったんです。前作では着物を着た女性が主人公で、一歩一歩踏みしめて歩くような物語だったので、今度は走り回ったり、自転車に乗ったりするようなお話にしたいと思いました」

だから、主人公・流星の年齢は過去の2作に比べてかなり若い。彼の心情の変化や成長が綴られていくのだが…。

「強い作品にしたいと言いながら、流星は弱々しくて泣き虫で、いつも悩みを抱えているような男の子なんですよね(笑)。でも、そういう彼から見た“強さ”、流星が想いを寄せるリリーや、ひいおばあさんである菊さんの強さを描いてみたかったんです。女性の方が強いのは、今の世の中を見たときに、女性が強くて男性が弱いという方が自然な構図なのかなと思って(笑)」

コンプレックス、恋心、悲しみ…。さまざまな想いを経験しながら成長していく流星とリリー。そんなふたりを見守るのが、菊さんだ。この三人のやりとりに触れていると、心が温まるよう。これまでも小川さんの作品では、おばあさんへの愛が必ず登場してきた。

「私自身、祖母と過ごす時間が長かったので、いろんな影響を受けたなって。でも結局、満足のいくおばあちゃん孝行はできなかった。その思いを、流星やリリーが菊さんに対してやってくれた気がします。菊さんも、ふたりがよく行く“スタバ”に行きたいって言ったり(笑)。世代が離れているから…と決めつけるのではなく、(おばあちゃんと)一緒に何かをすることで学ぶことってたくさんあると思うんです」

流星とリリーも、菊さんから学んだことを受け継いでいく決意をする。それがとても大切な使命のように思えた。

「自分のルーツを辿っていくと、木のようにたくさんの枝が広がっていて…。実感しにくいけど、自分もその一部で、どのご先祖様が欠けても今の自分はないと考えると、すごく奇跡的なことに思えるんです。そう思えるのと気づかないで過ごすのとでは、喜びや苦しみの感じ方も全然違うんじゃないかと」

年末年始に帰省したら、久しぶりにおばあちゃんと出かけてみようか。

※情報は、2009年12月のものです

サヨナライツカ
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