

![]() えくに・かおり
1964年、東京都出身。87年『草之丞の話』で、はないちもんめ小さな童話大賞を受賞。以後、小説を中心に、詩、童話、翻訳、エッセイなど、幅広く執筆し、若い女性を中心に圧倒的な支持を誇る。03年『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞。近年の著書に『がらくた』(新潮社)、『左岸』(集英社)などがある。 |
「童話らしい童話を書きたいとずっと思っていたけれど、私にとっては小説を書くよりも難しくて。それがようやく実現できました」 少し恥ずかしそうに、そう語る江國香織さん。そもそも執筆を始めたのは「童話を書きたかったから」で、文壇にデビューしたのも「童話雑誌で賞をもらったのがきっかけ」。その彼女が構想から完成までおよそ8年かけて書き下ろしたこの長編童話は、野生の雪だるまが主人公という独創性あふれる物語だ。 「人工ではなく、“野生”の雪だるまであるということが、私の中で大事だったんです。『雪だるまの話を書く』と決めてからもなかなか思うように進まなかったんですが、“野生”という言葉を思いついたとき、雪子ちゃんのキャラクターが自然とできあがって。赤ちゃんと同じように汚れがなくて真っ白な、新鮮でみずみずしいものがふいに地上に降りてくる…。その子が見る世界を物語にしたかった」 小さな村で温かい人間の友人に囲まれ、好奇心の赴くままに日々の暮らしを楽しむ雪子ちゃん。生きていることが嬉しくて楽しくて仕方がない!という姿がなんとも愛くるしいが、その一方で、彼女は自分がいつか溶けて消えてしまう存在であることを理解している。その絶妙な孤独感は、まさに江國作品ならではのフレーバーといえるだろう。 「犬や猫を見ていても思うんですが、孤独って“悲しい”とか“寂しい”とかではなく、ノーマルな状態。特に野生動物にとっては、生きていること、死んでしまうことと同じで、選べない状況だから、その清潔さが雪子ちゃんにもあるといいなと思ったんです。それに、人間も同じですよね。特に年を取ってくると、私もそうですが、父も母も亡くなって、ふたりとももう記憶の中にしかいないけれど、それでも私はまだ日々生きていかなくちゃならない。だから雪子ちゃんは、わりと普遍的な存在かもしれません」 物語をやさしく彩る、山本容子さんの銅版画も魅力のひとつ。 「私自身、雪子ちゃんのことはよく知っているつもりだったけど、初めて挿絵を見たときは『やっと会えた!』という気がしました。雪子ちゃんは自分が持って生まれた肉体と五感、知能と感性だけを使って生きていきますが、人間ももともとはそう。読んでいくうちに、そのときの感覚を思い出してくれると嬉しいです」 |
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※情報は、2009年11月のものです